INTERVIEW

“オニール八菜のあのバレエを観て幸せになったよ”
-20年後も、そう言われるダンサーでありたい-

『パリ・オペラ座バレエ団で踊ること』ー幼い頃から抱いていた夢に、まっすぐ立ち向かい、一歩ずつ、着実なステップを昇ってきた。正団員になったのは3年前。短い時間に、カドリーユからコリフェ、スジェを経て15年11月にはバレエ団の頂点“エトワール”に次ぐプルミエール・ダンスーズに昇格し、16年5月には、“バレエ界のアカデミー賞”と称されるブノワ賞を受賞。バレエに捧げてきた21年の軌跡をたどりながら、その素顔に迫る。

バレリーナとしてのキャリアを積むごとに、住む国が変わり、愛する家族と離れることを余儀なくされてきたが、その度に大きな成長を遂げてきた。そして13年、3度目の試験で、ついに正式団員としての入団が決まる。

在団5年目の現在は、最高位エトワールに次ぐプルミエール・ダンスーズとして活躍中だ。14年には、“若手バレエダンサーの登竜門”と呼ばれるヴァルナ国際バレエコンクールで銀賞を受賞。ブノワ賞を受賞した今、将来エトワール候補確実と叫ばれ、世界から注目を浴びているが、常に初心を忘れることなく、レッスンに、舞台に、自分のなすべきことに粛々と励む毎日を送っている。

「舞台に立つ直前や出てからの数分は、いつも緊張します。本番前には舞台袖に立ち、ルルベを3回やって、3回めにバランスを取ります。それをもう一度繰り返したあと、呼吸を整えてから背中をポンと自分で叩くー心を落ち着けるために、毎回必ずやっていることです」

「テクニシャンではなく、アーティストでありたい」と言う。「どれだけ素晴らしいテクニックを持っていても、やっぱりお客さんに伝わらない踊りってあるんですよね。それって悲しいことですし、観ていても面白くない。観客の目線でそう感じることがあります。

私が常に大切にしているのは、物語やその役が言いたいことをきちんと理解したうえで、“自分だったらどう表現するか?”と考えて、自然にやってみること。そのうえで、“もうちょっとこうした方がいいのでは?”といった先生方からのアドバイスはありがたく受けますが、工夫もせずに他の人を倣ったりすると、不自然さが否応なく出てしまうと思うので。私は、ナチュラルに表現できるアーティストでありたいです。テクニシャンとアーティスト、両方を兼ね備えているのがベストではありますけれど」

オーレリー・デュポンさん、アニエス・ルテステュさんなど、幼い頃から憧れていたオペラ座の大スターのダンサーたち、先生たち、そして厚くサポートしてくれる家族や今は亡き祖父母たち。「関わってきたすべての人に感謝しているし、影響を受けてきた」という彼女は、目を輝かせてこう語った。

「ある日、引退してからでも、“オニール八菜のあのバレエを観て幸せになったよ”と、観る方に思っていただけるようなダンサーでありたいです。この先20年くらいはありますが、すぐに終わってしまいそうで…。これまでも、思っていたよりもずっと早く、色々な役を踊らせてもらいましたが、これからもバリバリ踊っていきたいです」

これまでの活躍はほんの序章に過ぎず、本番はこれからといったところか。人知れずたゆまぬ努力を続けるひたむきなスピリットと静かな情熱が重なり合い、観る者の魂を美しく揺さぶるバレエがどう進化していくのか。羽ばたいてゆくダンサーの姿をそっと見守っていきたい。

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